時間領域FEMによるH面導波管誘電体共振器の散乱係数の計算(5) -磁界ベクトルとUniaxial PMLを用いた場合-
前回、Split-TypeのPMLと磁界ベクトルを用いた時間領域FEMの計算を行いましたが、あまり良い結果ではありませんでした。
今回はUniaxial PMLを使った場合の計算結果を記します。
引用文献はこちら。
Dan Jiao, Jian-Ming Jin, Eric Michielssen, and Douglas J. Riley
"Time-domain finite-element simulation of three-dimensional scattering and radiation problems using perfectly matched layers."
https://engineering.purdue.edu/~djiao/publications/DanJiao_pml3d.pdf
IEEE Transactions on Antennas and Propagation
vol. 51, no. 2, February 2003
文献では3次元電界ベクトルとPMLを用いた定式化が記されていますが、ここでは、H面導波管回路を扱うので2次元磁界ベクトルで定式化します。
X方向PML内の支配方程式は
∇x ε-1Λ-1 ∇x H + μΛd2 H / d2 t = 0
H = [ Hx, Hy, 0]T
Λ = [ 1 / sx 0 0 ]
[ 0 sx 0 ]
[ 0 0 sx ]
ガラーキン法を適用すると
μ<Ni, Λ★d2 H / dt2>Ω + <∇xNi, ε-1Λ-1★∇x H>Ω = 0
ここで、
1/sx ⇒ δ(t) - (σx / ε) exp( - σx t / ε) u(t)
δ(t):デルタ関数
u(t):ステップ関数
-ω2 sx u ⇒ d2 u / dt2 + (σx / ε) d u / dt
を用い、HをNjで
H = Σ Nj uj
と離散化すると、要素内の方程式として
[M] d2 u / d2 t> + [Mσ] d u / dt - [M1] d2 ψ / d2 t + [Kσ] ( u - ψ) = 0
[M] = ε0μ0 <Ni, μr Nj>
[Mσ] = ε0μ0 (σx / ε)<Ni, μr yy・Nj>
[M1] = ε0μ0 <Ni, μr xx・Nj>
[Kσ] = <∇x Ni, εr-1 zz・∇x Nj>
x, y, z:単位ベクトル
ψ = (σx / ε) exp ( - σx t / ε) ★ u
が得られます。この式は文献の(29)式に対応します。(補足:TMzのとき、[K] = <∇xNi, εr-1∇xNj>と[Kσ]は一致)
時間に関する離散化は、Newmark Beta法を用いました。ψは、uの関数ですがここでは独立変数として扱い、
ψ = β ψ n +1 + (1 - 2β) ψ n + βψ n - 1
d2 ψ / d2 t = (1 / ⊿t^2) ( ψ n+1 - 2 ψ n + ψ n - 1 )
と離散化しました。
微分ガウシアンパルスで励振したとき
PMLの層数は10としました。
比誘電率分布
σxの分布
散乱係数の計算結果(微分ガウシアンパルス)
ガウシアンパルスを励振したとき
こちらは、励振位置から観測点を25⊿lだけ離したときの結果を示します。(微分ガウシアンパルスの場合は、励振位置と観測点の間の距離は5⊿lなので、5倍の距離を取っていることになります。
磁界ベクトル+Uniaxial PMLの組み合わせで解析した場合は良好な結果が得られたようです。
これまでの計算結果からTMzに関して
●FDTDの場合は、Split-Type、UniaxialどちらのPMLでも良好な結果が得られるようです。
●FEMの場合は、Ezで計算した場合、Split-Type PMLとUniaxial PMLは等価で、良好な結果が得られます。磁界ベクトルH = [Hx, Hy]Tで計算した場合は、Uniaxial PMLでないと良好な結果が得られないようです。