ryujimiyaの日記

C#を使って数値解析したい

導波管内の疑似的なフォトニック結晶導波路のシミュレーション

フォトニック結晶導波路では、フォトニックバンドギャップの周波数帯では欠陥部分に局在する波しか無損失で伝送できないので、導波管内にフォトニック結晶の格子構造を作ればフォトニック結晶導波路の波が観測できるのではと思いました。

自作アプリ「H面導波管シミュレータ」で計算した結果は次の通りです。

 

格子を構成する誘電体ロッドは直方体で一辺の長さ0.5a、誘電体の屈折率n = 3.4とします。入出力には中空導波管を接続し、TE10モードを入射させます。

計算結果

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散乱係数周波数特性

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電磁界分布 2W/λ = 7.5 (a /λ = 0.326)

 |Ez|、Real(Ez)

 Real(Hx, Hy)、Real(PoyntingVector)

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 定在波が立っていますが波が局在化しているのを確認できました。同じような分布は2W/λがおよそ6.0~8.5の間で確認できます。

 

さて、「PHバンド」(前回紹介したアプリ)で円柱ロッドの正方形格子のフォトニックバンドギャップを計算すると、r = 0.25aとした場合

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a/λ = 0.262~0.376と計算されました。これは、H面導波管シミュレータで計算した2W/a = 6.02~8.64に対応しています。

やはり、H面導波管シミュレータで計算された局在波はフォトニックバンドギャップによるものと推察できます。

 

また、フォトニックバンドギャップの周波数帯ではTE10モードの透過係数が他の周波数帯に比べ落ち込んでいます。これは局在波以外のモードが伝搬できないため結果としてTE10モードの電磁界成分が出力端に届かなくなっているからだと思われます。

対数表示してみるとより分かりやすいです。

散乱係数周波数特性(対数表示)

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では。

 

【追記】

導波管を使ってフォトニック結晶のフォトニックバンドギャップを計測している例がありましたので記しておきます。

桐原聡秀、宮本欽生(大阪大学 生産科学専攻)

3次元フォトニック結晶の計算機支援設計・製造と電磁波回折挙動

http://www.mat.eng.osaka-u.ac.jp/coe21/res/e5h14.html

http://www.mat.eng.osaka-u.ac.jp/coe21/res/pdf/16.pdf

大阪大学,構造先進材料の設計・実用化と信頼性評価プロジェクト、

知的人工物創成のための機能デバイスシステムインテグレーションプロジェクト、生体再建材料の設計開発プロジェクト採択課題

事業推進者報告書(平成14年度) 

フォトニックバンドギャップがあると挿入損失が大きくなるようです。「H面導波管シミュレータ」で計算したときも同様の結果でしたが、挿入損失によるフォトニックバンドギャップの確認方法は実用で使用されるよく知られた方法なのかもしれません。