ryujimiyaの日記

C#を使って数値解析したい

時間領域FEMによるフォトニック結晶導波路の計算(完全整合層PML、吸収境界条件ABC、周期境界条件PBC)

1. はじめに

時間領域 FEM でフォトニック結晶導波路を解析する場合、ポート境界の界を扱う方法としてはいくつか考えられます。
(1) 完全整合層 (Perfectly Matched Layers, PML)
(2) 吸収境界条件 (Absorbing Boundary Conditions, ABC)
(3) 周期境界条件 (Periodic Boundary Conditions, PBC)
(1),(2) は伝搬方向に一様な通常の導波路の場合うまく解析できました。
フォトニック結晶導波路は周期構造導波路なので通常の導波路と同じような手法がどの程度適用できるかどうかを検討しました。

定式化は次のpdfにまとめました。

http://starlightparade.usamimi.info/ivyfem/doc/PCWaveguideABCPBCPML.pdf?p=1

 2. 完全整合層 (PML)

PMLの定式化はpdfを参照してください。

PML 領域は一様媒質にするか、周期構造を維持するかの選択肢があります。周期構造を維持する方が PML からの反射が少ないようです。
正方格子フォトニック導波路で PML 領域にも誘電体ロッドを設けた場合は問題なく解けましたが、三角形格子フォトニック導波路で PML 領域にもエアホールを設けたところ解析端のエアホールで発散する不具合が生じました。そのため三角形格子フォトニック結晶導波路では PML を一様媒質にして計算しています。

 〇正方格子90°ベンド(PML)

誘電体ロッドの屈折率n =  3.4、クラッドは真空(n=1.0)、ロッドの半径r = 0.18a (a:格子定数)です。

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〇三角形格子60°ベンド(PML)

エアホールは真空(n=1.0)、クラッドの屈折率はn=2.76、エアホールの半径r = 0.30a (a:格子定数)です。

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3 吸収境界条件 (ABC)

周期構造導波路の場合、Murの吸収境界条件のようなABCは満たさないので、どれくらいABCが周期構造導波路の条件に近いかが解けるかどうかの鍵となります。

定式化はpdfを参照してください。

正方格子の場合は、ある程度他の解析結果と近い結果が得られましたが、三角形格子の場合は駄目でした。

いまのところ対応方法はわかりません。

4 周期境界条件 (PBC)

Floqueの定理、すなわち周期構造の単位領域の境界1と2の関係を用いる方法です。

定式化はpdfを参照してください。

正方格子フォトニック導波路に適用してみたところ、一定時間経過するとポート境界からの反射のためか解析領域内に定在波が立ち始め徐々に発散してしまう結果になりました。

いまのところ対応方法はわかりません。

5. 固有モード展開複素吸収境界条件 (Modal ABCZ)

ABC、PBC 共にうまくいかなかったので、他の方法がないか試していたところ、固有モード展開の定式化を思いつきました。

定式化はpdfを参照してください。

この方法は時間変化界が複素数になります。FDTD法のsin/cos法と同様の方法を用いています。

Modal ABCZ を適用して解析したところ正方格子フォトニック結晶、三角形格子フォトニック結晶ともにまずまずの結果が得られました。

〇正方格子90°ベンド(Modal ABCZ)

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〇三角形格子60°ベンド(Modal ABCZ)

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6 まとめ

周期構造導波路、特にフォトニック結晶導波路のための吸収境界条件(PML、ABC、PBC) について検討しました。

ABCとPBCについてはフォトニック結晶導波路への適用はうまくいきませんでした。

PMLおよび、新たに定式化したModal ABCZはまずまずの結果が得られました。