ryujimiyaの日記

C#を使って数値解析したい

E面導波管伝達問題の計算

導波管にTE10モードを入力したとき、高さ方向に構造変化がある場合も2次元解析が可能らしいので試してみました。

E面導波管伝達問題(Transfer problem for E-plane waveguide)

定式化してみたところ、まず媒質は均一でないとスカラヘルムホルツ方程式に落とすことができませんでした。従って導波管内の媒質が均一であることが前提条件となります。

また、TE(transverse electric)モードでも不連続部では、波の進行方向にも電界が発生することは明らかなので単純にTEモードを仮定するわけにはいかないと思われます。

いろいろ調べてみたところ、LSE(longitudinal-section electric)モード、LSM(longitudinal-section magnetic)モードというものがあり、このLSEモードとLSMモードの混成波として一般の導波管の解析を行うことができるらしいです。

そこで、LSEモードを仮定してE面導波管の伝達問題を定式化してみました。

導波管の側面(E面)をXY平面とすると、TEモードはXY平面内の波の進行方向の電界が0のモードですが、LSEモードは、Z方向の電界が0のモードです。

TE10モードはLSEモードでもあるのでLSEモードで電磁界を表現できそうです。

また、E面に垂直な方向(z方向)の電磁界分布は、媒質を均一とすると導波管幅aを用いてsinまたはcosの関数で表せ、E面に垂直な磁界Hzは

    Hz = sin{(π/a)z} Hz(x, y)

と表現できそうです。

これを使えばHz(x, y)に関するヘルムホルツ方程式は、比透磁率μrを

    μr - (π/a)^2 / (k0 * k0 * εr)

と置き換えた形で表現できます。

またHzからE面内の電界を計算するとき、比誘電率εrを

    εr - (π/a)^2 / (k0 * k0 * μr)

と置き換えた形で表現できます。
あとは、H面導波管の定式化と同じ要領でHzについて定式化を行いました。
本当にこれでよいのかの検証は今後の課題として、いくつかのE面導波管回路について伝送特性を計算してみた結果を示します。
 
E面コーナーベンド(E-Plane Mitered Corner Bend)
引用元
VladimirA. Labay and JensBornemann, "Generalized scattering matrix of waveguide corners
distorted by discontinuities in the resonator region"
正方形導波管にTE10モードを入射したときの角の取れたE面直角コーナーベンドの解析例が載っていました。(引用元のFig.3a)
 
計算結果
※アプリの都合上、引用元の寸法から多少変更して計算しています。

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散乱係数の周波数特性

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散乱係数の周波数特性(対数表示) 

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 引用元では、8GHz近辺で|S11|の最小値をとっています。これは

     2W/λ = a/(c/f) = 22.86mm / (3.0e+8/8.0e+9) = 1.2192

 に相当します。

電磁界分布(E面)

    |Hz|の分布、Real(Hz)の分布

    (Ex,Ey)の分布、Real(Poynting Vector)の分布

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 直線導波管の場合TE10モードの導波管高さ方向の電磁界分布はconstでしたが、不連続部を挿入するとTE1n(n=0,1,...)のnが1以上のモードが発生していることが分かります。

【追記2012/11/24】 

DelFEM版アプリにE面計算を追加してみました。これにより、角の部分を直線で表現できるようになったので、再計算した結果を次に示します。

計算結果(角の境界を直線で表現した場合)

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散乱係数の周波数特性

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散乱係数の周波数特性(対数表示)

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 階段近似の場合と比較すると、|S11|の極小値の周波数が高周波側に移動しました。引用元と比較すると差異が見られます。

電磁界分布(E面)

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