MITC3シェル要素を用いた線形弾性体及び幾何学的非線形(有限回転)(St.Venant-Kirchhoff)薄板の曲げ計算
1. はじめに
これまで薄板の曲げの計算にDKT(discrete Kirchhoff Theory)要素、Mindlin薄板要素を用いました。これらはKirchhoff-Love板理論やReisner-Mindlin板理論といった特別な仮定のもとで定式化したものです。
一方3次元のソリッド要素、例えば三角柱要素の高さhを0に近づけて三角形要素にするdegenerated要素があります。この方法では特別な板理論の仮定に依存しないので線形ひずみのみならず、幾何学的非線形弾性体にも適用可能となります。
degenerated要素には大きな欠点があり、shear lockingとよばれる実際より硬い不正確な解が得られます。これを解決する方法としてMITC(Mixed Interpolation of Tensorial Components)の手法です。MITC要素はdegenerated要素の定式化で、ひずみの補間を変更します。共変面内ひずみ成分はdegenerated要素の補間から導かれる式をそのまま使いますが、共変横せん断ひずみ成分だけ新たな補間を導入します。この共変横せん断ひずみをassumedひずみと呼んでいます。
本記事ではMITC3要素 (MITC3節点三角形要素)を用いた線形及び非線形な曲げ計算を行っています。
2. MITC3要素定式化
定式化をpdfにまとめました。
〇MITC3線形
Mixed Interpolation of Tensorial Components(MITC) Triangular
Elements for Linear Plate Bending
http://starlightparade.usamimi.info/ivyfem/doc/MITCLinearPlate.pdf?p=0
〇MITC3幾何学的非線形(St.Venant-Kirchhoffモデル)
Geometrically Nonlinear MITC3 Plate Formulation
(St.Venant-Kirchhorff Model)
http://starlightparade.usamimi.info/ivyfem/doc/MITCStVenantPlate.pdf?p=0
3.計算結果
板の寸法
a = 1.0
b = a
厚さh = 0.2a
板の材料定数
密度ρ = 2.3 x 10^+3 kg/m^3
Young率 E = 169.0 x 10^+9
Poisson比 = 0.262
せん断補正係数Ks = 1.0(使わない)
3隅を固定し、残りの1隅に垂直方向の荷重をかけたときの薄板の曲げを計算しました。
3.1.線形モデル
DKT要素やMindlin要素とほぼ一致しています。変位(u,v,z)-荷重(m)グラフは線形になっています。
3.2. 幾何学的非線形(St.Venant-Kirchhoffモデル)
変位-荷重グラフが期待したように非線形になっています。また線形モデルではほとんど高さ方向((z方向)の変位のみでしたが、St.Venant-Kirchhoffモデルではx,y方向変位もあることが確認できます。St.Venant-Kirchhoffモデルの方がより現実の変形を表現できていると思われます。
4. まとめ
MITC3シェル要素を用いて線形弾性体、幾何学的非線形弾性体(一例としてSt.Venant-Kirchhoffモデル)の薄板曲げを計算しました。