疑似固有モード展開による導波管回路の伝達問題の計算
引用元はこちら
Jin-Fa Lee, Zoltan J. Cendes, “An adaptive spectral response modeling procedure for multiport microwave circuits”, IEEE Trans. Microwave Theory and Techniques, vol.MTT-35, p.1340 p.1347, December 1987
一様な導波管の固有モードは1次元の固有値問題に帰着できますが、2次元回路の固有モードも同じように2次元の固有値問題に帰着できます。
実際、回路の固有モードを求めてその重ね合せで周波数応答を計算する方法が確立されています。
ここではH面導波管回路について、厳密な固有モードではなく疑似的な固有モードを求め、それらの重ね合せで周波数帯域すべての応答を取得する方法を試してみました。
簡単に手法を要約すると、
1) 対象周波数帯域の2点を選んで、厳密な解を計算する。(といってもFEMは厳密解ではないのでここではきちんと通常の方法で計算したFEMの解のことを指します。)
2) 厳密な解の重ね合せで対象周波数帯域のすべての周波数に対して周波数応答を最小二乗法で推測する。
3) 2)の計算で最も残差の大きな周波数を選ぶ。ここで残差が希望する誤差内に収まっていれば、2)で計算した推測値を結果として採用する(終了)。
誤差内に収まっていなければ、最も残差の大きな周波数に対して厳密な解を計算する。
4) 2)に戻る。
です。
試した回路は誘電体装荷導波管共振器です。
結果はこちら。
1回目推測(周波数2点):
2回目推測(周波数3点):
3回目推測(周波数4点):
4回目推測(周波数5点):
ここで収束したので最終結果として採用しました。きちんと周波数50点をFEMで計算した計算結果とほぼ一致していると思います
厳密にFEMの計算をしたのは下記の5点の周波数です。
2W/λ = 1.0
2W/λ = 1.46
2W/λ = 1.54
2W/λ = 1.68
2W/λ = 2.00
これらがこの回路の疑似的な固有モードというわけです。
なお、この疑似的な固有モードは一次独立ですが直交はしてないみたいです。
Jin-Fa Lee氏はAnsoftと関連がある方なのでもしかしたらAnsoftの電磁界シミュレータにこの手法が応用されているかも。ちょっと興味深いですね。