三角形格子フォトニック結晶導波路60°ベンドの広帯域化(2)
前回に引き続きエアホール型三角形格子フォトニック結晶導波路の60°ベンドの広帯域構造の伝送特性を計算します。
引用元
Gang Ren, Wanhua Zheng, Yejin Zhang, Ke Wang, Xiaoyu Du, Mingxin Xing, and Lianghui Chen
”Mode Analysis and Design of a Low-Loss Photonic Crystal 60 Waveguide Bend”
http://ir.semi.ac.cn/bitstream/172111/6349/1/334.pdf
Journal of Lightwave Technology, vol. 26, no. 14, p.2215 - p.2218, July 15, 2008
こちらの文献には、ベンド部の上下のエアホールを調整することで広帯域化を実現する方法が記述されています。
初期構造
エアホールの半径 r = 0.36a (a:格子定数)、基板の屈折率 n = 3.32です。
http://ryujimiya.hatenablog.com/entry/2013/02/08/213651
文献のFig.2に初期構造の伝送特性が載っており、以前その範囲をFEMでも計算しましたが、後で扱う帯域はこの帯域ではありません。初期構造では 格子定数 a = 380 nmとしてa/λ = 0.236(λ = 1.610 μm)から a/λ = 0.262 (λ = 1.4504 μm)を計算しましたが、広帯域構造で扱う帯域は、波長ではλ = 1.46 μmからλ = 1.64 μmと同じですが、格子定数が a = 450 nmに変更されています。つまり、規格化周波数では a/λ = 0.274 からa/λ = 0.308になります。
そこで、初期構造の帯域と広帯域構造の帯域の両方を含む帯域で初期構造の伝送特性を再計算しました。
a/λ = 0.278以降が今回特性を改善する対象帯域です。透過特性はほぼ|S21| = 0.4 (電力にして16%)でフラットでした。
中間帯域は奇モードが存在するため、構造の非対称性から一部の電力が奇モードへ変換されていることがわかります。しかし、低周波数帯域と高周波数帯域は偶モードのみになっています。
広帯域構造
ベンド部の上側エアホールをr' = 0.75r = 0.75 ×(0.36a)に変更し、さらにベンドの対称軸にそって0.30aだけ上側にずらします。またベンド部の下側にエアホールを追加しベンド部の導波路が対称構造になるようにします。文献によるとこのような変更により入出力導波路の固有モード分布とベンド部導波路の固有モード分布の差異が小さくなり透過特性が改善されるようです。
広帯域構造はこちら。
広帯域構造のベンドの伝送特性計算結果は次のようになりました。
a/λ = 0.278以降の特性がかなり改善されていることが確認できます。
文献のFig.6に伝送特性と同じ周波数領域のみを計算すると下記のようになります。a = 450 nmとして、a/λ = 0.278 (λ = 1.618 μm) からa/λ = 0.306 (λ = 1.471 μm)の周波数領域です。ほぼ文献と同じ結果が得られていると思います。
磁界Hzの実数部分布(a/λ = 0.290 : λ = 1.552 μm)
磁界Hzの絶対値分布(a/λ = 0.290 : λ = 1.552 μm)
【Appendix】
固有モードの計算
偶モード
奇モード
伝送特性の計算精度
計算精度を推定する為、直線導波路の伝送特性を計算しました。結果は次の通りです。a/λ = 0.239より低周波側では誤差が大きいですが、それ以外は問題ないレベルだと思います。
【2013-07-19】
境界上のdHz/dxの計算に誤差があったので修正し、散乱係数周波数特性を再計算しました。