フォトニック結晶導波路90°ダブルベンド(Γ-M方向 5列欠陥)の散乱係数計算
フォトニック結晶(PhC)導波路のダブルベンドで、ベンド部のΓ-M方向の導波路が1列欠陥(W1、Coupled Resonator Optical Waveguides)、3列欠陥(W3)のものの伝送特性を計算しました。今回は5列欠陥(W5)の試作例が見つかったので、これを数値計算してみます。
引用元はこちら。
J. S. Jensen, O. Sigmund, L. H. Frandsen, P. I. Borel, A. Harpoth, and M. Kristensen
"Topology design and fabrication of an efficient double 90° photonic Crystal waveguide bend"
http://orbit.dtu.dk/fedora/objects/orbit:17199/datastreams/file_3976036/content
IEEE Photonics Technology Letters, vol. 17, no. 6, June 2005
格子定数は a = 400 nm、エアホールの半径は r = 275 nm / 2 = 0.344 a です。フォトニックバンドギャップ(PBG)は文献によると a/λ :0.2592 ~ 0.3436。こちらもSilicon on insulator(SOI)で試作しているようです。ただ、2D解析で必要な実効屈折率の記載はないのでPBGから推定して、屈折率としてn = 2.95とすることにしました。
ダブルベンド(W5)の散乱係数計算
計算結果
文献のFig.2にλ = 1250 nm (a/λ = 0.320)から λ = 1500 nm (a/λ = 0.267)のシミュレーション結果が、Fig.4に測定結果が載っています。透過率が100%となる共振点を比べるとFig.2のシミュレーション結果とよく一致していると思います。
最適化構造のシミュレーション(1)
文献ではトポロジー最適化をダブルベンドに適用して、文献Fig.3のような最適化構造を導き出しています。興味深い構造だったので、これを参考に似た構造を構成し、シミュレーションしてみました。
1/4リング状のエアホールをコーナーに設けた構造です。できるだけ隙間がないようにすこし1/4より大きくとっています。(ちょうど1/4だと下側コーナーの場合270°~360°ですが、上記構造では273°~367°です。)また、リングの中央の半径は5.5 x (a/2)で、リングの幅は0.60 aです。
計算結果
通過帯域が広域にわたって現れました。ただ反射共振点も多く最適構造とはいえないかもしれません。
a/λ = 0.282のときの磁界の実数部の分布
a/λ = 0.282のときの磁界の絶対値の分布
最適化構造のシミュレーション(2)
もう少し構造を変化させてみます。
円弧を273°~390°にしてみました。もうこれはW5導波路とは言い難いですが、この構造だと結構いい感じになります。
広帯域に渡ってフラットな透過特性が得られています。
a/λ = 0.2850の磁界の実数部分布
a/λ = 0.2850の磁界の絶対値分布
【Appendix】
バンド図
エアホール半径 r = 0.344a、屈折率 n = 2.95のフォトニック結晶のバンド図は以下の通りです。PBGは、0.260~0.371です。
※上記バンド図は、「PHバンド」で計算した結果です。
Γ-K導波路(W1)の固有モード
偶モード
奇モード
【2013-07-21】
境界上のdHz/dxの計算に誤差があったので修正し、散乱係数周波数特性を再計算しました。