ryujimiyaの日記

C#を使って数値解析したい

エアホール型フォトニック結晶方向性結合器の固有モード&伝送特性FEM解析

三角形格子のフォトニック結晶を用いた方向性結合器の伝送特性をFEMで計算してみました。

引用元はこちら。

J. Zimmermanna, M. Kampa, A. Forchela, R. Marzb

"Photonic crystal waveguide directional couplers as wavelength selective optical filters"

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0030401803022442

http://144.206.159.178/FT/809/206745/14402602.pdf

Optics Communications, Volume 230, Issues 4 - 6, 1 February 2004, p. 387- 392

W1導波路間の結合領域は2列のエアホールを設けた方向性結合器が取り上げられています。エアホールの半径r = 0.30a、基板の屈折率 n = 3.4です。

 

2チャンネル導波路の固有モード解析

この2チャンネル結合導波路の固有モードの分散特性は下記の通りでした。横軸はβd / (2π) (d = a)、縦軸はa/λ です。

(1) W1偶モードからなる偶モード

 後の奇モードとの交点(de-coupling point:結合解除点?)でモードが追跡できなくなる(これは実装上の問題です)ので結合解除点の上側と下側に分けて計算しています。

結合解除点の上側領域

結合解除点の下側領域

βd/(2π) = 0.30のときの磁界Hzの実数部分布

(2) W1偶モードからなる奇モード

結合解除点の上側

 結合解除点の上側領域では奇モードの方が偶モードより上側にありました。

結合解除点の下側

  結合解除点の下側では奇モードは偶モードより下側にありました。

βd/(2π) = 0.30のときの磁界Hzの実数部分布

(3) W1奇モードからなる偶モード

βd/(2π) = 0.30のときの磁界Hzの実数部分布

(4) W1奇モードからなる奇モード

βd/(2π) = 0.30のときの磁界Hzの実数部分布

文献で説明されているように、2チャンネル結合導波路のスーパーモード(super modes)は、W1導波路の偶モード、奇モードの分散特性が2つに分離して形成されていることが確認できます。なお、W1導波路の固有モードは下記のとおりです。

W1導波路偶モード

W1導波路奇モード

 

3ポート方向性結合器の伝送特性計算

引用文献のFig.5の方向性結合器の伝送特性を計算しました。結合部分は7aです(左右両端の0.5aを含めて)。なお、文献では特性を改善するためにベンド部のエアホールの大きさを変更しているようですがどの部分か定かでないので(adjacent to waveguidesってどこのことでしょう?)、ここでは初期形状で計算しています。

散乱係数の計算結果

 ポート番号は、直線導波路をポート1~2、ベンド導波路の出力をポート3としています。

ポート3のドロップ出力は a/λ = 0.2185から0.2200でポート2のスルー出力より大きくなっています。一方、文献のFig.6の伝送特性を参照すると1550 nm ~ 1580 nmでドロップ出力がスルー出力より大きくなっています。本文を読むとこの回路だけ格子定数a = 333 nmとしているようで、これに従うと ドロップ出力の範囲(1550 nm ~ 1580 nm)はa/λ = 0.2107~0.2148で、計算結果は0.08程高周波側にずれていることになります。このずれを除けばドロップ出力とスルー出力の周波数特性の傾向はよく似た結果が得られています。(なお、この回路以外では a = 343 nmとしておりこのときドロップ出力の範囲(1550 nm ~ 1580 nm)はa/λ = 0.2171~0.2212となり今回の計算結果とほぼ一致します)(追記:a/λ = 0.22のとき結合が強いという記載があるので、a = 343 nmが正解だと思います。)

ドロップ出力優勢時(a/λ = 0.21925)の磁界Hzの実数部分布

ドロップ出力優勢時(a/λ = 0.21925)の磁界Hzの絶対値分布

スルー出力優勢時(a/λ = 0.23000)の磁界Hzの実数部分布

スルー出力優勢時(a/λ = 0.23000)の磁界Hzの絶対値分布

 

【追記:2013/03/09】

完全結合長に合せた場合の方向性結合器の伝送特性

引用文献のFig.2を参照すると、ωa/(2πc) = a/λ = 0.220以下の周波数では、1周期d (= a)当たりの位相差は0.10 × 2π / d 以上となっています。ということは、完全結合長はLc = π/(0.10 × 2π / d) = 0.5 d / 0.10 = 5 d = 5aとなり、5格子以下です。一方、Fig.5では、7aの結合長の方向性結合器が示されており、上記ではこれを計算しました。しかし、完全結合長にしたがって方向性結合器を構成するとすれば、結合長は5aとするのが適当だと思います。

ということで、結合長5aの場合を計算してみました。

散乱係数計算結果(結合長5a)

最初に計算した結合長7aの場合と比べると、a/λ = 0.2210あたりのドロップ出力がなくなり、a/λ = 0.2200より低周波の領域のドロップ出力が明確になりました。

a/λ = 0.2195の時の磁界Hzの実数部分布

a/λ = 0.2195の時の磁界Hzの絶対値分布

 【Appendix】

位相差、及び完全結合長をFEMで計算した結果は下記のとおりです。

位相差 △k = (βeven - βodd) d / (2π)

完全結合長 Lc/d = π / {(βeven - βodd)d} = 0.5 / △k

FEMで計算した結果も、Fig.2と同じくa/λ = 0.220以下では、位相差0.10 × 2π/d以上、完全結合長 Lcは5a以下となりました。

 

 【2013-07-21】

境界上のdHz/dxの計算に誤差があったので修正し、散乱係数周波数特性を再計算しました。