エアホール型フォトニック結晶方向性結合器の固有モード&伝送特性FEM解析(2)
前回の記事の続きです。
エアホール型フォトニック結晶方向性結合器の固有モード&伝送特性FEM解析
http://ryujimiya.hatenablog.com/entry/2013/03/08/023633
前回、上図のような方向性結合器(エアホール半径r = 0.30 a、基板の屈折率n = 3.4)の特性をFEMで計算しましたが、結合長がかなり短いことからドロップ側の導波路の終端が特性に影響しているかもしれません。そこで、ドロップ側の導波路を終端せずに2チャンネルのままで特性計算ができないか試してみました。要は、次のような解析モデルで特性計算できないかということです。
結合長7aの方向性結合器
この構造で下側の入力チャンネルのみに光を入射させることを考えます。1つの方法としては、左端境界を完全整合層(PML)で接続し境界上の下側チャンネルのみに入射光を与えることが考えられますが、完全整合層(PML)を使った場合、恐らくメモリが足りなくて計算できないのでこれまでの計算と同様、固有モード展開の方法を取りました。
つまり、2チャンネル導波路の2つのスーパーモードの重ね合せで片方だけ励振してみました。スーパーモードは、偶モードと奇モードなので50%、50%で足し合わせると片方の導波路だけに集中した分布となることが予想できます。
上側チャンネルの振幅が0になるように2つのスーパーモードを重ね合せた結果は次の通りです。ReHz:は実数部、ImHzは:虚数部です。横軸は2チャンネル導波路のY方向に対応しますが目盛はデータ番号で距離ではありません。横軸の左側が2チャンネル導波路の上部に対応します。
2つのスーパーモードの重ね合せ結果
a/λ = 0.219251
電力換算で偶スーパーモードを37.6%、奇スーパーモードを62.4%の比率にすると、上側チャンネル部の磁界が0になりました。
a/λ = 0.230001
偶スーパーモード:47.0%、奇スーパーモード:53.0%の比率で重ね合せると上側チャンネル部の磁界が0になりました。
以上より、2つのモードの重ね合せで作成した入射光は、1チャンネル単独のモードとの差分がありますが、周波数が高くなり結合が弱まるとかなり1チャンネル単独のモードに近くなることが分かります。
もっと低周波での分布形状を改善するには高次のエバネセントなモードを考慮する必要がありそうですがここでは上記の結果をそのまま使用して伝送特性を計算しようと思います。
散乱係数計算結果(結合長7a、文献に掲載されている構造)
左側の境界から2つのスーパーモードを重ね合せて入射させたときの散乱係数計算結果です。ポート番号は、左側2チャンネル導波路がポート1、右のスルー出力がポート2、右上のドロップ出力がポート3です。
前回のドロップチャンネルを終端した結果とよく似た結果となりました。ということで恐らくa/λ = 0.219あたりのドロップ光は終端からの反射による共振でなく結合長を伝搬することによってドロップした出力であるといえると思います。なお、S1(1)は奇スーパーモードの反射係数、S1(2)は偶スーパーモードの反射係数です。
a/λ = 0.219251
a/λ = 0.230001
結合長5aの構造も計算してみました。FEMで計算した完全結合長にあわせた構造です。
散乱係数計算結果(結合長5a)
a/λ = 0.219501
a/λ = 0.230001
前回の終端バージョンと同様、結合長5aの方が結合長7aの構造に比べドロップ出力が改善されることが確認できます。
【2013-07-21】
境界上のdHz/dxの計算に誤差があったので修正し、散乱係数周波数特性を再計算しました。