フォトニック結晶3ポートフィルタの伝送特性の数値計算
以前数値計算した3線欠陥(L3)空洞共振器を用いたフィルタを試作している文献があったので伝送特性を数値計算してみました。
前回の記事:
http://ryujimiya.hatenablog.com/entry/2013/03/21/010308
今回の引用元:
Cheng Ren, Jie Tian, Shuai Feng, Haihua Tao, Yazhao Liu, Kun Ren, Zhiyuan Li, Bingying Cheng, and Daozhong Zhang
"High resolution three-port filter in two dimensional photonic crystal slabs"
http://files.instrument.com.cn/FilesCenter/20080306/64381.pdf
Optics Express, vol. 14, no. 21, 16 October 2006
文献では共振器に接続する入出力導波路の終端位置について2ポートフィルタを製作して検討した後、3ポートフィルタを製作しています。
2ポートフィルタ
フォトニック結晶の格子定数 a = 420 nm、エアホールの半径 r = 130 nm (0.30952a)です。基板はSi基板で基板の厚さは235nm(0.55952a)です。ここでは2次元問題としてシミュレーションしますが、基板の厚さよりこれまでに計算したものと変わらないので実効屈折率 n = 2.76としました。
共振器は入出力導波路からX方向に3aだけ離した距離に設けます。共振器中央からの入出力導波路終端のX方向距離L = 4.0aと L = -4.0aについて計算しました。(文献のFig.1(a)、(b))。なお、共振器の側面エアホールは、0.20aだけずらしています。
(a) L= +4.0a
散乱係数計算結果
a/λ = 0.274 (λ = 1532.8 nm)
(b) L= - 4.0a
散乱係数計算結果
a/λ = 0.2738 (λ = 1534.0 nm)
文献Fig.2(a)、(b)に、(a)の共振点の実測値は1536 nm、(b)の共振点の実測値は1537 nmと記載されています。今回の計算結果は1532.8nm、1534.0nmで、高周波側にずれた結果となっています。また、実測では(a)の場合、2つの共振点が見られますが今回の計算では確認できませんでした。
3ポートフィルタ
文献のFig.3の3ポートフィルタの伝送特性を計算しました。格子定数 a = 430 nm、エアホール半径 r = 145 nm (0.33721 a)で、共振器の側面エアホールのX方向シフト距離は上の共振器が10 nm (0.023256 a)、下の共振器が20 nm (0.046512 a)です。基板の実効屈折率 n = 2.76としています。
メモリ不足から文献と同じ構造では計算できなかったので、共振器と入出力導波路のY方向距離は2aとしています(文献では3a)。入出力導波路のX方向シフトは4aで文献と同じです。
散乱係数計算結果
ポート番号は左がポート1、右上がポート2、右下がポート3です。
上側共振器の共振点(S21最大点)はa/λ = 0.2841(1513.6nm)、下側共振器の共振点(S31最大点)は a/λ = 0.2830(1519.4nm)でした。文献と比較すると2つの共振周波数の間隔がやや大きいようです。文献Fig.4の実測値はa/λ = 0.28114 (λ = 1529.5nm)、0.28086 (λ = 1531nm)、文献Fig.5の3次元シミュレーション結果はa/λ = 0.28256 (1521.8nm)、0.28212(1524.2nm)となっています。
a/λ = 0.2841 (1513.6nm)(上の共振器の共振点)
磁界Hzの実数部の分布
磁界Hzの絶対値の分布
a/λ = 0.2830(1519.4nm) (下の共振器の共振点)
磁界Hzの実数部の分布
磁界Hzの絶対値分布
【Appendix】
a = 430 nm、 r = 145 nm(0.33721a)のときの入出力導波路の固有モード分散特性を基板の実効屈折率n = 2.76として計算した結果を示します。文献Fig.6の3次元シミュレーションの結果とおよそ一致しています。
偶モード
奇モード
【2013-07-21】
屈折率の記載を間違えていました。(誤)2.8→(正)2.76
【2013-07-21】
境界上のdHz/dxの計算に誤差があったので修正し、散乱係数周波数特性を再計算しました。