ryujimiyaの日記

C#を使って数値解析したい

フォトニック結晶導波路の伝達問題の計算

前回、周期構造を持つ導波路の固有モードをDelFEMで計算しました。

 2次元導波路伝搬定数の周期構造解析用FEMによる計算

  http://ryujimiya.hatenablog.com/entry/2012/11/26/003737

 2次元導波路伝搬定数の周期構造解析用FEMによる計算(2) ー非線形固有値方程式の解法についてー

  http://ryujimiya.hatenablog.com/entry/2012/11/28/015112

 フォトニック結晶導波路の固有モードの周期構造解析用FEMによる計算

  http://ryujimiya.hatenablog.com/entry/2012/11/29/041704

 フォトニック結晶導波路の固有モードの周期構造解析用FEMによる計算(2)

  http://ryujimiya.hatenablog.com/entry/2012/11/30/004535

固有モードが計算できるということは、その周期構造導波路の伝達問題もFEMで解けるということなので試してみました。

参考にしたのは、以前紹介した次の文献です。

(1) 財団法人電気学会, “計算電磁気学”, 培風館, pp.93-pp.95,2003-07-21

      3.2.5. フォトニック結晶導波路解析への応用(小柴正則)

(2) Yasuhide Tsuji and Masanori Koshiba,

“Finite element method using port truncation by perfectly matched layer boundary conditions for optical waveguide discontinuity problems,”

 Journal of Lightwave Technology, vol. 20, pp. 463 - 468, March 2002

これらの文献では、完全整合層(PML:Perfectly Matched Layer)を使用したフォトニック導波路の固有モード解析法及び伝達問題の解析法が示されています。
しかし、PMLを使用した場合解析領域を余分に取る必要があるため非力なPCではメモリ不足で充分な計算ができないことがあります(私のPCの場合そうでした)。
ここでは、H面導波管の伝達問題と同じ方法、つまり入出力ポートの境界条件に固有モード展開を使用して定式化してみました。
 
周期構造導波路伝達問題の固有モード展開による定式化
固有モード展開を用いた場合、境界積分項の境界に垂直な方向の界の偏微分を評価する必要があります。一様導波路の場合は、x方向を入出力導波路の伝搬方向、y方向を境界の方向とすると、Φ(x, y) = φ(y) exp(-jβx)なので
  dΦ/dx  を - jβφ exp(-jβx) = - jβΦ
に置き換えることができます。(βは伝搬定数、d/dxは伝搬方向偏微分)
周期構造の導波路の場合は、
  Φ(x, y) = φ(x, y)exp(-jβx)
とおいて固有モードを計算したので
   dΦ/dx を
    - jβφexp(-jβx) + (dφ/dx) exp(-jβx)
   = - jβ { φ - (1/jβ)(dφ/dx) } exp(-jβx)
に置き換えます。(dφ/dx)exp(-jβx)が今回新たに追加された項で、これを計算する処理をH面導波管解析用プログラムに追加すれば、周期構造導波路の伝達問題が解けるはずです。
さて、(dφ/dx)の計算ですが、φの節点上の値を直接使用して計算する場合、境界上の界だけでは求めることができず内部領域の節点の界の値も必要になってきます。
なるべく一様導波路の伝達問題の実装を変更することなく対応したかったので、境界上の界の微分
 (dφ/dx) = ΣNj(y) ψj
  ψj    :  境界上の節点のdφ/dxの値
  Nj(y):  線要素の形状関数
のように境界上の節点における界の微分値ψjの補間で近似することとしました。これにより、伝達問題の計算では境界上節点の界固有ベクトル{φ}とその微分値のベクトル{ψ}を用いることになり、内部節点を考えなくてよくなります。
もちろん、{ψ}を計算するときは内部節点の界が必要ですが、固有モード解析内で閉じることができるので実装が簡単になります。
この方法を検証するため、格子定数a、ロッドの半径r = 0.18a、ロッドの屈折率n = 3.4のフォトニック結晶導波路の直線導波路の散乱係数を計算してみました。
 
フォトニック結晶直線導波路の散乱係数計算
Cad図面

f:id:ryujimiya:20121215052135p:plain

 左右の部分領域は、フォトニック結晶導波路の固有モードを計算する為に設けた領域で、伝達問題を解くときは内部側の境界ではなにも境界条件を設定していません。

計算結果

散乱係数|S11|、|S21|の周波数特性

f:id:ryujimiya:20121215052942p:plain

導波管の場合と比べるとかなりメッシュを細かくしないとフォトニックバンドギャップの周波数帯全域で|S11|を0.1以下に抑えられませんでした。(1次補間の三角形要素を使用)

また、上にある界分布は、2W/λ = 9.8(a = W/11 = 0.445)のものですが、定在波が立っているように見えます。ただ、一様導波路と異なり周期構造導波路は伝搬方向にも界分布があるので多分これでいいのだと思います(あまり自信ない)

計算途中の界分布(|Ez|)は以下の通りでした。

界分布(Z方向電界の絶対値の分布)

2W/λ = 8.1 (a/λ = 0.368)

f:id:ryujimiya:20121215053918p:plain

2W/λ = 8.64 (a/λ = 0.393)

f:id:ryujimiya:20121215054321p:plain

2W/λ = 9.1 (a/λ = 0.414)

f:id:ryujimiya:20121215054440p:plain

2W/λ = 9.6 (a/λ = 0.436)

f:id:ryujimiya:20121215054707p:plain