ryujimiyaの日記

C#を使って数値解析したい

エアホール型60°三角形格子フォトニック導波路の60°ベンドの散乱特性のFEM解析

エアホール型60°三角形フォトニック導波路の60°ベンドの伝送特性をΦを直接解く固有モード解析方法と固有モード展開に基づくFEM伝達問題の解析方法を組み合わせた方法で解いてみました。(前回の記事で実装したものです。)

引用元はこちら。

Malihe Khatibi Moghaddam, Mir Mojtaba Mirsalehi, Amir Reza Attari

"A 60° photonic crystal waveguide bend with improved transmission characteristics"

http://www.if.pwr.wroc.pl/~optappl/pdf/2009/no2/optappl_3902p307.pdf

Optica Applicata, Vol. XXXIX, No. 2, 2009 

Optica Applicata, 2009, Vol. 39 Issue 2, p307, June 2009

引用元のFig.3にエアホール型三角形格子の60°ベンドの散乱特性の計算結果が載っています。

エアホールの半径r = 0.30a、誘電体基板の屈折率n = 2.76です。扱うモードはTM波です。

【2013-02-14追記】a/λ = 0.267~0.271の精度が悪かったので再計算したものに差し替えました。

Cad図面

 出力ポートの境界はY軸に平行ではないので周期構造導波路のFEM固有値問題解析では座標系を回転させてX方向が伝搬方向となるようにしてから固有モードを計算しました。そして入力ポートの固有モードと一致することを確認できたので、最終的には入力ポートの計算結果を出力ポートにも用いるようにプログラムしました。

 

計算結果

散乱係数|S11|、|S21|

 横軸はa/λ、縦軸は散乱係数の絶対値です。

 文献と比べるとa/λ換算で0.02~0.03ほど高周波側にずれていますがほぼ一致した特性カーブを描いていることが確認できました。

なお、文献では電力換算の特性(|S11|^2、|S21|^2)が示されています。

 磁界Hzの実数部 (a/λ = 0.278)

 磁界Hzの絶対値 (a/λ = 0.278)

 

実は、この問題では固有モードの選択で悩みました。今回計算した周波数帯では、第一ブリルアンゾーンにある固有モードは、伝搬定数が正のモードβ1と伝搬定数が負のモードβ2の2つでどちらも偶モードでした。誘電体ロッド型フォトニック導波路の伝達問題の計算ではβ1を入射波として採用し、β2は反射波としてあつかっていましたが、今回のエアホール型の場合は、β2を入射波として計算しました。

2つのモードの分散特性は次の通りです。横軸はa/λ、縦軸はβd / (2π)です。 (d:周期、60°三角形格子の場合格子定数と同じでd =a)

β1の分散特性

f:id:ryujimiya:20130214051547p:plain

 β2の分散特性(β2を2π/dだけシフトした結果)

f:id:ryujimiya:20130214051600p:plain

 (β2 + 2π/ d)と伝搬定数を位相にして1周期ずらした解もブロッホの定理より同じ固有モードとなりますが、この(β2 + 2π/ d)が誘電体基板の屈折率を超えないのでβ1ではなくβ2のモードが基本モードとなるみたいです。

上記の60°ベンドの散乱特性の結果はβ2を採用したときの計算結果です。

なお、β1を採用した場合の結果はこちら。

β1を採用してもβ2を採用したときと同じ散乱係数が得られますが、界分布に差異が見られます。これは固有モードの虚数部が反転していることに起因すると思われます。

 

このモードを採用しない理由をうまく説明できないので、間違っているのかもしれないけど。β1の分散特性でdω/dβ1が負であることとなんか関係ある?

 

では。また。

 

【2013-2-14 追記】

最初に計算した図面では、入出力の周期構造領域を下記のようにとっていました。

このときの計算結果は次の通りでした。

しかし、同じ入出力導波路を直線導波路として散乱係数を求めると

となり、a/λ = 0.267~0.271で誤差があることが分かります。

一方、今回再計算で採用した入出力導波路の領域の取り方だと、

となり、直線導波路の計算誤差が改善されます。したがって、60°ベンドの計算結果も今回再計算した結果の方が誤差の少ない結果だと思われます。

 

【2013-07-19】

境界上のdHz/dxの計算に誤差があったので修正し、散乱係数周波数特性を再計算しました。