時間領域FEMおよび周波数領域のためのPMLを用いた誘電体スラブ導波路の終端の計算
1.はじめに
前記事に引き続き、時間領域PMLと周波数領域PMLを用いて計算しました。今回は誘電体スラブ導波路が終端されたときの反射および放射を計算しています。
以下の計算では誘電体スラブのコアの屈折率はn1 = 3.6、クラッドの屈折率はn2 = 3.24としています。
2.開放形直線誘電体スラブ導波路(時間領域PML)
時間領域FEMのためのPMLの精度を確かめるためにまず直線誘電体スラブ導波路の計算をしました。
周囲の白っぽい領域がPMLです。開放形なので解析領域のまわりをPMLで閉じた形になります。
PMLの方向は1方向PML(X方向PML、Y方向PML)に加え、XY両方向PMLを使用することになります。
周囲を囲むPMLは単一媒質ではなく解析領域の境界の媒質分布を引き継ぐようにしています。このようにすることでPMLからの反射を減少することが知られています。
右に向かって波が進み、PMLに吸収されていく様子が見れます。
フーリエ変換したポート1の振幅とポート2の振幅の比(疑似的な|S21|)を計算すると、ほぼ1.0を推移していることがわかります。
3. 開放形誘電体スラブ導波路の終端(時間領域PML)
本題の誘電体スラブ導波路の終端です。
計算結果を示します。
誘電体導波路終端で波は放射波と反射波に分離しており、放射波は誘電体導波路終端の中心を中心とした円になっています。上下のPMLからの反射があればこのようにはならないのでうまく計算で来ていることがわかります。
また反射波は誘電体スラブ導波路のモード分布を保ち左側のPMLに吸収されます。
フーリエ変換で求めた反射係数|S11|の周波数特性です。他の定式化で求めた反射係数とよく一致しています。
4. 遮蔽形直線誘電体スラブ導波路(時間領域PML)
誘電体スラブ導波路の上下を平行平板で囲んだ遮蔽形の場合を比較のため計算しました。
左右の白っぽい部分がPMLです。また上下は平行平板(電気壁)です。遮蔽形の場合は、X方向PMLまたはY方向PMLのみで、XY両方向PMLは使用しなくて済みます。
直線導波路の場合、上下への放射があるわけではないので遮蔽形で扱っても開放形とさほど変わりありません。
5. 遮蔽形誘電体スラブ導波路の終端(時間領域PML)
引き続き上下を平行平板(電気壁)で遮蔽した誘電体導波路です。誘電体スラブ導波路を終端しています。
PMLは左右だけで上下は電気壁なので放射波が反射して放射の分布が開放形とは異なるものになることが予想できます。
フーリエ変換で求めた反射係数|S11|の周波数特性は、0.5あたりを推移しますが、反射係数が急激に減少する共振点が1点だけあるのが見えます。これは他の定式化の計算結果と一致します。
6. 遮蔽形誘電体スラブ導波路の終端(周波数領域PML)
ここでは周波数領域FEMのPMLを使って遮蔽形誘電体スラブ導波路の終端を計算した結果を示します。
共振点の磁界分布|Hz|をみると右側の導波管の高次モードと誘電体スラブのモードがうまく移行できています。
また周波数全体の特性は少し振動が見られるものの他の定式化の結果と一致しています。
7. まとめ
時間領域FEMおよび周波数領域FEMにPMLを導入して、誘電体スラブ導波路の終端の計算を行いました。開放形および遮蔽形の誘電体導波路両方について計算を行いました。