ryujimiyaの日記

C#を使って数値解析したい

フォトニック結晶導波路のマルチモード干渉(MMI)のFEM解析

フォトニック結晶欠陥導波路で、1つのロッド欠陥のあるシングルモード導波路から複数のロッド欠陥のある多モード導波路へ接続すると、多モード導波路では、複数のモードが励振されて互いに干渉し、ある一定の場所で入力した波と同じ像(self image)が出現します。このような干渉をマルチモード干渉(MMI: Multi-mode interference)と言うようです。

マルチモード干渉については下記出版物に詳細な記述があります。

山内潤治監修、藪哲郎著

光導波路解析入門, 7.5 MMI(マルチモード干渉結合器), p.176 - p.198,

森北出版, 2007-10-05

さて、フォトニック結晶導波路のMMIで探すと下記の文献がありました。

Hyun-Jun Kim, Insu Park, Beom-Hoan O, Se-Geun Park, El-Hang Lee, and Seung-Gol Lee

"Self-imaging phenomena in multi-mode photonic crystal line-defect waveguides: Application to wavelength de-multiplexing",

http://dspace.inha.ac.kr/bitstream/10505/20407/1/Self-imaging%20phenomena.pdf

Optics Express, vol.12, no.23,15 November 2004

文献では5ロッド欠陥のフォトニック結晶導波路MMIが取り上げられています。
今回はこの文献のMMIをFEMで計算してみました。
フォトニック結晶導波路の格子定数a、ロッドの屈折率n =3.4、ロッドの半径r = 0.18a、導波路幅W = (5a + 3a x 2) = 11aです。
 
Cad図面

  1格子あたりの1辺の分割数は5で計算しました。(6で計算したかったのですが、メモリ不足でできません)
 
5ロッド欠陥導波路の固有モード
 最大5個のモードが伝搬します。

 
散乱係数の周波数特性

ここで、
 |S11|:ポート1の反射係数
 |S21|:ポート2の基本モードの透過係数
 |S31|:ポート2の2次モードの透過係数
 |S41|:ポート2の3次モードの透過係数
 |S51|:ポート2の4次モードの透過係数
 |S61|:ポート2の5次モードの透過係数
です。
励振される固有モードは、3次モードが最も多く、次いで4次、2次、基本、5次モードの順になっています。
電界分布
2W/λ = 8.14 (a/λ = 0.370)

 引用文献では、31aの位置の上部に像ができるとありますが、今回の計算では、28aに像ができています。

 2W/λ = 9.56 (a/λ = 0.435)

 この周波数では28aの位置の下部に像ができています。 
 
以上より、28aの位置で多モード線路を打ち切り、上部と下部に1チャンネルの導波路を接続すれば分波器(DEMUX)が実現できそうです。
 
フォトニック結晶導波路MMI分波器(DEMUX)
Cad図面

 ポート番号は、左を1、右下を2、右上を3としています。多モード線路の長さは28aとしています。

 散乱係数周波数特性

 2W/λが8.14から8.22までの間では、ポート3は透過、ポート2は遮断状態となっています。また、2W/λが9.10以降では、ポート2が透過、ポート3が遮断状態となる周波数帯が何か所か確認できます。

電界分布
2W/λ = 8.14(a/λ = 0.370)

 2W/λ = 9.56 (a/λ = 0.435)

 予想通り、多モード線路の長さを28aとすると、2W/λ = 8.14のとき上側のみ出力され、2W/λ = 9.56のとき下側のみに出力されました。
 
※なお、引用文献では多モード線路の長さを31aとして計算しています。31aでも計算してみましたが、電界分布がマッチしないため28aほど際立った分波器にはなりませんでした。計算精度をあげれば31aあたりに近づくのかもしれませんが私のPCではこれ以上の分割数では計算できなかったので確認はとれていません。
 
面白い現象でした、計算していて楽しかったです。
では、また。